24歳。ああなんて大人な数字だろう、とかつて思った。
今から6年前、私は18歳で浪人生だった。ちょうどその年の9月、祝日と土日がうまく重なりシルバーウィークと呼ばれる5連休があった。もちろん浪人生には関係のないことだ。その時のニュースで、次に5連休となるのは6年後の2015年です、と言っていた。
6年後。その時私は24歳か。きっと大学を卒業して会社員になって清潔なオフィスでバリバリ働いているに違いない。化粧も覚えておしゃれになって、髪の毛を染めてパーマなんかあてちゃったりして、もちろん結婚を考えて付き合っている相手もいるのだろう。そして5連休にはその人とヨーロッパなんかに旅行しているのかも、早く24歳にならないかしら。などと垢抜けない予備校生は夢想した。
はたして24歳になった私はと言うと、未だに大学生をしている。9月の5連休も卒業制作だ何だかんだでおそらく休んでいる場合じゃないだろう。結婚?遠すぎて見えねえ!
そもそも、19歳でフィリピンに初めて来た時点で、あるいは興奮冷めやらぬまま21歳のときに留学もしてしまった時点で、その後インターンでも戻ってきた時点で、そしてやっと復学したと思ったら今また毎日スラムを歩いている時点で、18歳の時の可愛らしい人生計画はどこかへ行ってしまったのだ。
それでも、ありがたいことに元気に生きている。スラムの環境は決して良いとは言えないが、ここでは子どもたちが裸で外を走り回り、手作りのハンモックで朝から眠る男性もいれば、女性たちは集まっておしゃべりしている。日本では隣人が誰かもわからないアパートに一人で住む私には、ここはとても温かく幸せな場所に見えるときがある。
もちろん楽しい思いばかりではない。居住状況を調査するのが目的であるため、住民に電気や水道についての質問をしていると、毎日の生活の大変さをとうとうと語り出す方もいる。
「あなたが将来建築家になって成功したら、ここに戻ってきて私たちを助けてください」
顔にしわが深く刻まれたおばあさんにぎゅっと手を握られそう言われたとき、思わず身体が硬直した。「ええ、もちろん」と答えながらも、「ごめんなさい、私にはそんな力はないのです」と心の中で深く詫びた。
そんなことを経験するひたすら地道な毎日。清潔なオフィスも華やかな海外旅行も無縁の生活ではあるが、日々生きていくことの愛おしさと哀しさに出会い、哀しみに囚われず強く生きていく人に出会う。そして自分もまた、悲喜こもごもあるちっぽけな生活を営む一人であると知る。
18歳の私は、24歳のこの現実を全く予想しなかった。それはとても可笑しく愉快だ。次に5連休となるのは11年後の2026年。35歳の私もまた、私を大きく裏切っていて欲しいと願う。
もちろん楽しい思いばかりではない。居住状況を調査するのが目的であるため、住民に電気や水道についての質問をしていると、毎日の生活の大変さをとうとうと語り出す方もいる。
「あなたが将来建築家になって成功したら、ここに戻ってきて私たちを助けてください」
顔にしわが深く刻まれたおばあさんにぎゅっと手を握られそう言われたとき、思わず身体が硬直した。「ええ、もちろん」と答えながらも、「ごめんなさい、私にはそんな力はないのです」と心の中で深く詫びた。
そんなことを経験するひたすら地道な毎日。清潔なオフィスも華やかな海外旅行も無縁の生活ではあるが、日々生きていくことの愛おしさと哀しさに出会い、哀しみに囚われず強く生きていく人に出会う。そして自分もまた、悲喜こもごもあるちっぽけな生活を営む一人であると知る。
18歳の私は、24歳のこの現実を全く予想しなかった。それはとても可笑しく愉快だ。次に5連休となるのは11年後の2026年。35歳の私もまた、私を大きく裏切っていて欲しいと願う。