「海外に1年も住んでいたのにまだそんな考え方なんだね」
呆れたような顔をして友人にそう言われた。思わず冷たい汗が出るような気がするぐらい、
どきっとした。その時私は、働くことの不安や心配などネガティブなことを並べ立ててぐちぐち話していたところだった。
海外に行けば良くも悪くも自分の価値観が変わり、広い世界を知ることで小さいことなど吹っ切れるようになるのに、ということを彼女は言いたかったのだろう。
彼女とは生まれた時から22年来の友人だ。元々根暗な私の性格も考え方も全て把握されている。その日は、私がフィリピンから帰国して久しぶりに会おうと、私の下宿に遊びに来ていたのだった。
友人は半年ほど南米に留学していた。元々明るい性格だったが、陽気な国にいたせいか今の彼女はすがすがしいほど悩まない人だ。うじうじと悩みがちな私は、その底抜けな明るさがときにうらやましくも感じた。でも私はきっとそうはなれないだろうとも思った。
彼女が帰ったあとも、言われた言葉がずっと頭を離れなかった。
私は自分をよく考える人間だと思っていた。でも本当は違ったのだ。
不安な点を並べ立てて、それを「そんなことないよ、大丈夫だよ」と言ってもらいたかっただけなのだと気づいた。
私がしていたことは、なぐさめてもらおうとベタベタ甘えていただけだったのだ。
そして思い返してみると、今までもいろんな人に相談するふりをして、無意識のうちに「そんなことないよ、大丈夫だよ」となぐさめてもらおうとしていたことに気が付いた。
猛烈に恥ずかしさがこみ上げ、もうネガティブなことを言うのはやめようと強く思った。
22年間染みついた性格はそう簡単に変えられるものではないだろう。
だから、これからはネガティブなことを言ったら貯金箱に千円入れていこうと思う。私の中のネガティブの芽を一つ一つ取り出して無くしていくように。
そしていつか貯金箱がいっぱいになったら、陽気になった私をどこか遠い国へ連れて行こうと
思う。
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