起きた変化はというと、以前よりも身体がどっと疲れるようになった。退院直後は周囲の気遣いもあり、17時を過ぎるとすぐに帰らしてもらった。ただ段々身体を慣らしているつもりでも、残業は19時までが限界になっている。頭が働かなくなってしまう。
帰り道のコンビニで晩御飯を買い、家に帰ってレンジで温めて食べ、そのままぐったりベッドに横になったまま気づくと眠っている。翌日も気分が晴れないまま目覚める。入院前に比べると、体力が全く無くなってしまったように感じる。
高校生の時にも、同じようなことがあった。
高校1年生、15歳の私は、部活で毎日ランニングをしていた。長距離を走るのは得意な方だった。だからランニングでは集団の先頭にいることが多かった。
高校に入学して半年たった秋に、アメリカにホームステイした。1か月、現地の高校に通い、現地の食事を食べる。運動は全くしなかったが、1か月だけなのだから何も変わらないと思っていた。
帰国して、また部活でランニングして、愕然とした。すぐに疲れ、身体は重く、足は進まない。私はのろのろと最後尾を走ることとなった。それでも自分は必死だった。結局私は高3で部活を引退するまで、ランニングは最後尾だった。最後まで、元の速さを取り戻せなかった。
体力とは、下っていくエスカレーターに乗り続けているようなものだ。そう言ったのは弟が入団していた野球チームの監督らしいが、その通りだと思う。鍛え続けていれば、現状をキープできる。何もしなければ、ずるずる下がっていく。また鍛え始めても、前と同じトレーニングでは、下がった位置をキープし続けるのとは変わらない。前の位置を取り戻すには、前の何倍ものトレーニングをしなければいけないのだ。
体力だけでなく、最近、できなくなる自分に直面する機会が何度かある。身体の柔軟性も、ピアノ、勉強の集中力も、長い文章を書くことも。自分はできたはずなのに、という記憶だけがむなしい。
来年の2月が来ると27歳になる。まだまだ若さの盛りであると思う。だけどもう、何でもできるわけではない。できなくなっていくことは、確実に増えていく。
だからこそ自分が人生の中でどうしてもやりたいこと、やらなければいけないことは慎重に選び取っていかなければいけないのだと思う。