2017年9月11日月曜日

扁桃腺手術日記1

扁桃腺の手術をした。
入院したときから短い記録をつけていた。

8月31日
入院1日目。大学生の時に一人旅で安宿に泊まっていたときのことを思い出す。両隣に人の気配がある安心感。ここぞとばかりにパックやクリームを持ってきたので手術が終わったら綺麗にしよう。

9月1日
朝、マスクをして眠ったが乾燥していて喉がひりひりする。手術を受けられるか不安になる。じわじわと嫌な緊張感。お腹が減ったし喉も渇いた。あと2時間で手術。やることが無いからベッドの上でストレッチばかりしている。

ストレッチをすると体がかたくなっていて驚く。高校生まで習っていたバレエはどこにいったのか。180度の開脚もできない。トウシューズを履いてピルエットももちろんもうできない。できた頃の自分はもういないのだと知って、悲しかった。

従姉妹の結婚式で弾いたピアノもそうだ。2カ月近く練習したが、当日は手が震えミスタッチの連続だった。家族のフォローが余計に辛かった。別の親族からは見てる方が緊張したと言われた。かつてコンクールで準優勝したその記憶だけが自分の中にあって、でもそれは今の私ではなかった。

点滴用の部分麻酔テープを貼られた。普通のセロテープのよう。これで麻酔できるのか。まだ感覚はある。

手術前検査。舌に電流を流し味覚を調べる。舌に金属の棒を当てられじわっと鉄の味の変化があるとボタンを押す。あんまり変化がよくわからなかった。とりわけ私の舌は奥が味覚が鈍いらしい。確かに繊細な舌じゃないが、そのおかげで何でも食べられるのだ!鈍感舌でもいいのだ!

フィリピン留学中、他の日本人学生が現地の料理のお肉がくさい、米がまずいと食べなかったことがあった。私は何の匂いも感じなくて、自分はどこかおかしいのだろうかとも思いながら、毎日もりもり食べた。ぷくぷく太った。今でも、何を食べてもだいたい美味しい。

手術前の診察終了。先生がいい声。喉の手術をする人として説得力抜群。第一声が「扁桃腺大きいですねー!」なんかちょっと嬉しそうですらあった。

手術着が5才児の浴衣のよう。あと30分で手術。さらばマンセイヘントウエン!

ー手術後ー

手術台はドラマで見たそのままだった。自分で台に上がりあとはされるがまま。看護師さんたちはテキパキという音が聞こえてきそうなぐらい手際がよかった。自分の心臓のピッピッという音が部屋にいっぱいに聞こえた。深呼吸すると心音がゆっくりになった。

眠気を感じる間もなく、麻酔にかかったようだ。名前を呼ばれ麻酔から覚めると喉がひりひりと痛い。全身に鉛が乗っかったように重い。眠りたいが眠れなくて、瞼だけ閉じていた。

流動食ですら喉にしみて食べられない。すぐに咳き込んでしまう。痩せそう。これを機に痩せよう。普段の扁桃炎と同じぐらいの痛さだが、いつまで続くのか…

夜の点滴終わり。ひたすらストレッチ。その後化粧水をつけてクリームを塗って、youtubeで調べた造顔マッサージをした。顔がすっきり気持ちいい。入院中、食事もあまり食べられないし化粧もしないから肌も休められるし、ちょっと綺麗になれるんちゃうか私。

9月2日
隣の女性の「あー」という叫び声で5時に目覚める。その人は多分今日手術を受ける。うなされていたのだろう。あまりに悲痛な声に私が驚き、完全に目が覚めてしまった。喉の痛みが戻ってきた。

昨日取った自分の扁桃腺は大きくぷりぷりしたあさりのようだった。牡蠣のようでもあった。貝系。もうあさりの味噌汁も生牡蠣もカキフライも食べる気にならない。自分の扁桃腺を思い出す。写真に撮っておかなくて本当によかった。

しとしとと雨。具の無い味噌汁と水のようなおかゆ、桃の味だけついたゼリーの朝ごはんを食べるというより飲んだ。昨日に比べて咳き込まず食べられるようになった。相変わらず喉はひりひりと痛く何もやる気が起きない。冷房が効きすぎなのか私が薄着なのか部屋も食堂も寒かった。

黒部ダムの放水がテレビで生中継されている。2年前黒部ダムに放水を見に行ったときは直前に雨が降り、結局放水は無かった。ただ一面水がひたひたと貯まっていて、太陽に照らされエメラルド色にきらきら光っていたのが綺麗だった。

点滴がぎゅんぎゅん入っていく。冷たさを感じる。痺れたような感じ。この感覚は何かに似ている。辛いガムを食べた時の痺れと清涼感だ。

具無しのポタージュ、具無しの味噌汁、具無しの茶碗蒸し、くず湯、ミルクティーの昼食。30分前に痛み止めを飲んだから痛みは少しだけで食べ(飲め)た。特にポタージュは喉に膜が張る感じで全く痛みを感じなかった。昼食が終わるとまたひりつくような痛みが戻ってきてベッドで布団にくるまっている。

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