10連休も終わり、東京に戻ってきた。今回は母も東京出張なので、二人で。
私のアパートの最寄り駅へ着いたあと、駅前のカフェで簡単な夕飯を食べる。そして明日からの食材を買いにスーパーへ行った。
「ラディッシュいらん?ぶどう買っとき。野菜ジュースも必要やろ。ウインナーもあると便利ちゃう?ほらハーゲンダッツの6個入りも。」
普段、自分では買わないようなものをどんどん母はかごに入れていく。いつも1週間分の食材は2500円までと決めてスーパーで買い物しているが、この日は6500円の高額な買い物となった。支払いは、母がしてくれた。
そういえば、初任給をもらったのにまだ私は両親、祖母に何もプレゼントをしたり食事をごちそうしたりしていない。帰省前に何が欲しいか母に尋ねたが、「プレゼントなんてもったいない使い方せんとき。ちゃんと貯金して。」と返答された。
さらに帰省中、京都の伊勢丹で会社に着ていく洋服を探しに行ったときも、ジャケット、スカート、パンツという結構高い服たちを、母は入社祝いだと言って買ってくれたのだった。
「もう初任給もらったんやから自分で払う」と言っても、「お給料は大事に残しとき」と言う。
私は、「ありがとう」ばかり言った。
東京の私のアパートに到着した後、ふと、前に見た報道番組を思い出した。
その番組では、オレオレ詐欺に引っかかった高齢男性の通話の内容が紹介されていた。
仕事に失敗して500万円必要だという泣き声の息子役詐欺師に対して、「気にしなくてもいい。お父さんが用意してあげるから」と男性は言った。その後、詐欺グループの一員が息子のミスによって大きな損害を受けたのだという説明をしたときにも、「うちの息子が、ご迷惑おかけして本当に申し訳ありませんでした」と丁寧に謝っていた。
私は、買ってもらったばかりの真新しい服と冷蔵庫いっぱいの食材を眺めながら、そのニュースを思い出した。
息子のために大金を用意してしまう誰かの父親。娘のためにいっぱい洋服と食材を買ってくれる私の母。もちろん母には絶対詐欺に引っかかって欲しくないけれど、でも私は、息子に大金を用意してあげたくなる気持ちが少しわかった気がした。
子がいくつになっても、いつくしみ、そして心配してしまう。それが親というものなのかもしれない。
母は、「月曜からも機嫌よく会社行ってやあ」と言って、帰っていった。
ぽっかりとした寂しさのあと、真新しい洋服を着て、美味しいご飯を食べることを想像すると、会社行きたくないけどちょっと頑張って行こうかな、という気になってくるのだった。
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