この漫画には夢がある。仲間とのきらきらした友情も、素敵な恋愛も出てこないけれど、生きることが嫌になるようなことがあっても、ここへ行けばとても庶民的な、でも身も心もいっぱいに満たされそうなごはんが食べられるだろう、という夢が。そしてまた、生きるのも悪くないかと思えるに違いない。
様々な悩みを持つ人がこの深夜食堂を訪れる。不倫をする脚本家や、内定を取り消された女子大生、暴力をふるう売れない芸人と付き合う女性。
でも食べるという幸せは誰にでも訪れる。食べて、満たされて、そしてまた悩みを抱えたまま帰っていく。
この漫画を読んだとき、私は、前に松任谷由美のコンサートで聞いたMCの内容を思い出した。ユーミンはこう言った。
映画は、ハッピーエンドだったり予定調和で終わったりすることが多いけど、実際の人生は、使われなかったカットや、NGシーンを抱えながら、生きていかなくてはならない。人はそれをどうすることもできない。でも、そんなリアルな物語を、これからも歌っていきたい。
NGシーンばかりだと嘆きたくなる日々を、この漫画はそっと癒してくれる気がする。
ちなみに、この漫画で見たシーチキン丼を最近しょっちゅう作っている。美味しいだけでなく、とっても安く出来るので貧乏学生にもぴったりのメニューだ。
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