Youtubeで2歳の耳が聞こえない男の子が、機械を使って初めて母親の声を聞く動画を見た。思いがけず泣いてしまった。音が聞こえた瞬間のはっとした表情、きゃっきゃと喜ぶ仕草がひどく可愛らしかった。
ああ科学ってすごいんだなと思った。なんていい世界に住んでいるんだろうとも思った。今日も世界で新しい技術が生まれ、新しいことができるようになる。障害は障害でなくなっていく。
私には忘れられない光景がある。
浪人時代、予備校に向かう電車に乗っていたときのことだ。若いお母さんが赤ちゃんを抱っこしていた。私はその赤ちゃんの顔をぼんやりと見つめていた。なんだか惹きつけられるような不思議な表情だったのだ。しばらくして、ふとその赤ちゃんは目が見えていないことに気づいた。それでもどこかを見つめているようなその目は、澄み切っていてガラス玉のようにしっとりと光っていた。何もかも映し出しているような、全てを見通しているような瞳だった。私は、あの目よりも美しい目を持った人にそれ以降出会ったことがない。
Youtubeの動画を見ながら、その赤ちゃんのことを思い出した。
もし科学の力で、あの赤ちゃんがこの世の全てを見たとき、同じようにはっとして喜びの声を上げるのだろうか。あの透き通った瞳に、この世界の美しい風景を映し出してほしいと願う。
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