小学生の頃、書道を習っていた。
硬筆は得意だった。お手本を見て、忠実にその文字の形を真似ればいいのだから。
毛筆は苦手だった。線の勢いだとか、かすれ、にじみ。それにはお手本が無い。正解もない。のびのびした文字、味のある文字。そんなのちっとも理解できなかった。毎週通ってもずっと昇級できず、筆を持つのがいやでいやで仕方なかった。
先生にどこが良くないのか助言される度に落ち込んだ。助言を守ろうとすればするほど、緊張し、筆を持つ手は震え、線は弱々しくなった。書けない自分に悲しくなり、よく教室のトイレにこもって泣いた。
そのうち、教室に行って筆を持つだけで条件反射のように涙が出るようになった。目の前の半紙が水滴で濡れた。すずりに入ったたっぷりの墨は、黒々として飲み込まれていきそうな気分になった。
全身の細胞が拒否している、と思った。もう私は何も書けない。
ちょうど小学校を卒業する時期だったので中学進学を理由に書道をやめた。
今、またその当時と同じような状況にいる。パソコンを開くたび、みっともなくめそめそと泣いている。あの頃のようにうやむやに辞めることも出来ない。
私の悪いところは、すぐ全てを否定してしまうところだ。1つできないことがあると、私はこんなことも出来ない、もう何もできないという思考回路を辿ってしまう。
作れない。私には何も作れない。
泣いても何も解決されず、パソコンの画面は滲んでよく見えない。ただ空虚に、私の顔をぼんやりと照らすだけだ。
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