2014年5月3日土曜日

感想「流星ワゴン」
















著者からの内容紹介
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った 。
僕らは、友達になれるだろうか? 
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして 自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか ?

私はかつて思っていた。
恋人ができれば、結婚すれば、子どもが出来れば、それはとても幸せな状態なのだろう、と。
それはまるで自分以外の誰かが、勝手に私をどこか幸せな場所へ連れていってくれるようなことだと思っていた。

でも人間同士の営みに確かなことなんて存在しない。感情は生もので日々移り変わってゆく。好きだという気持ちが一瞬で嫌いに変化するなんてことしょっちゅうある。でもその感情の豊かさこそが、生きているという証なのだと思う。

結婚、家族、親子。それらは単なるパッケージで、そこに幸福はセットになっていない。自分で幸せにしていく、という絶え間ない作業が必要なのだ。

この物語は、それがうまくできず、崩壊しきった家庭を持つ男が主人公だ。そして過去にさかのぼり、妻との、子どもとの、父とのほころびを一つずつ修復していこうとする。崩壊した家族、絶望的な状況はなにも変わらないラストだが、微かな希望とともに終わるところに少し救われる。

人の気持ちは目に見えない。相手が何を考えているかなんてわからない。だからこそ想像する。そして間違いも起こす。でもそれこそがロボットとは違う人間の面白さで、可笑しさで、難しさなのだろう。

主人公と同じ38歳のときにまた読んだら、きっと違う感想を抱くのだろうな。

0 件のコメント:

コメントを投稿